なんの因果かわかりませんが、私は、恋愛コラムニストです。そして、日々、めちゃくちゃな数恋愛相談にのっております。数百か、数千でしょうか。
基本的に、人間は悩みをコレクションするのが大好きです。
なので悩みは尽きません。貴女も相談を持ちかけられることがあると思います。恋愛だけでなく、仕事、人間関係、ぼんやりした不安まで。たんに雑談で、そういう話をするときもありますよね
そして相談を受けたからには「ちょっとは良くなってもらいたい……!」と考えるのが人情ですよね。私だってそうです。そのために心理療法なんかも学びました。
そこでの最大の学びは「相談ごとは、ひたすら話を聞くだけ80%は解消にむかう」というものです。
いわばコミュニケーションの奥義みたいなものです。
今回はこの話をしようと思います。十分、日常会話にも応用できると思います。ぜひ学んでいってください。
ひたすら話を聞くだけで悩みの80%は氷のようにとけていく
とにかく話を聞くわけですね。
いうのは簡単ですが、これがなかなか難しいのですよ。思わず「それってさ──」とアドバイスをしたくなってしまうからです。しかし、グッとこらえましょう。恋愛相談に限っては、むこうが話をすることだけが大事なのです。井戸の水がかれるくらいまで、感情を吐きだしてもらこと。
というのも「相談者の話をきくだけで、その悩みの80%は解消する」という考えがあるから。
解決ではありません。解消するのです。問題自体は変わらないかもしれない、けど、こんがらがった苦しみが氷のようにとけるわけです──まず元気になってもらうのですね。
そして問題に立ち向かおうという気分になってもらうのです。つまり「問題を解決するのではなく、問題を解決しようというくらい元気になってもらう」のが相談を受ける側の役割でもあるのです。
そもそも相談者は「どうすればいいか?」をわかっていることも多いのです。
・不倫はよくないから別れるべき
・好きならアプローチすべき
・相手に恋人がいるなら身をひくべき
正論なんて簡単に思い浮かべられますから。ここでのポイントは「すでに相談者は正論を自覚している」ということです。まわりに何十回とアドバイスを受けていることでしょう。
はじめにアドバイスしたくなっても、こらえるべきといいましたよね。つい口出ししたくなるのはわかります。しかし苦い薬のように、グッと飲みこまなくてはならないのですよ。その意味はここにあります。
それは「相談者はすでに正論をたくさん聞かされてうんざりしているから」なのですね。
どうしたらいいかはわかっている。ネットで検索したら、そんな答えは一番上にでるし、家族や友人もドヤ顔でアドバイスをしてくる、でも、でも、それができないから悩んでるんだ──というわけです。
そうなのです。
恋愛や人生のあらゆる相談ごとにおいて、正論は無価値です。まず、このシビアな現実を受け入れなくてはなりません。正論が無価値ってすごいですよね。学校の教科書とは真逆の発想です。
少なくとも、私たちが想像する以上に価値は低いわけです。相談者の役に立たないどころか、苦しめるもとになっているから。
だからこそ、私たちは、話をきかなくてはならないのです。自分を信じて相談を持ちかけてくれた方をガッカリさせてはいけないのです。なんだ、こいつも他の人間と同じように正論を言うだけか、そんなのはわかってるんだよ、と──ならないように。
とにかく話を聞き続けましょう。
そのときのコツは「善し悪しの判断をしないこと」です。
相手を知ろうとすることだけが大事なのです。それが道徳的にだとか、社会的にだとか、あれこれ判断するのは私たちの役割ではありません。裁判所とかSNSにまかせましょう。知ること、判断すること。この違いを心がけておきましょう。
私たちの仕事は、たんに知ろうとすること、です。
そう考えると、つい口を挟みたくなる気持ちも治まるかもしれません。別に相手の「受け入れられない価値観(ex : 不倫をやめられない!)」を取り入れることで、自分が脅かされることもありませんから。たんに未知の生物の生態を知ろうとしてるんだ(ちょっと失礼ですけれも)くらいの気持ちでもOKです。
よく人間の器という表現がありますよね。あいつは器が小さい、とか。その器とは、この「他人の価値観をどれだけ受け入れることができるか?」なのだと思います。
自分ひとりで精一杯のおちょこくらいの大きさの人もいれば、道端においてある赤いバケツくらいの人もいて、何百人も入れそうな市民プールくらいの人もいて、海のように広い人もいるでしょう。
つまり誰かに何かをいいたくなったときは「ああ、自分の器もまだまだだな……」と笑い飛ばすときなのかもしれませんね。ちょっとカッコいい言い方をすると、他人の相談をうけるとき、私たちは、自分の器を試されているわけなのですよ。
いかに他人を否定することなく、ただ知ろうとできるか。受け入れることができるか。その姿勢をしめすことができるか、が勝負になります。
相談者は不安な顔をしていることでしょう。また、ろくに苦しみを理解されないまま正論をつきつけられて(相手はスッキリした顔をして)終わるのではとおびえているでしょう。
だからこそ「私の役割はあなたが、どんな想いをしているのかを知ることです。あなたの正解をいっしょに探すことです。どこまでもお付き合いするので話していただけませんか?」と伝えましょう。
とにかく聞くこと。ひらすら聞くこと。感情が出尽くすまで聞くこと。「私ばかり喋ってますね」と遠慮をされても「本当に大事な話なんだろうと思います。もっと聞かせてください」と聞くこと。
そのときの相談者の心のうちを想像してみてください。
何度も強調しますが──それほど難しいことなのです──とにかく聞くこと。それだけです。シンプルですが、たいていのものごとはシンプルに終着駅にむかうものなのですよ。
もちろん、アドバイスがいけないという話ではありませんよ。まずは聞くところからしないと相手は心をとざしてしまう、という話ですね。
ふんふん長いあいだ話をきいて、最後に、ぽんと、ひとことだけアドバイスを投げる。心をこめたボールを相手の胸のなかに放りこむ。すると相談者は、あっ、という顔をする──それくらいでいいんだと思います。 相手の心に刺さるものって、そういうものじゃありませんか。
そんなふうに、いま貴女が悩みのなかにいるなら救われてほしいですし、いつか同じような立場の人を救ってあげられる存在になってもらえら嬉しいな、と思います。
貴女のもとに幸せが舞いおりるように願っております。
▼インスタライブでいうてた浅田さんが執筆のときに使ってるスタンドとキーボードです。
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